私はその狂気の正体を知っている。あの方も多分、知っている。お互いに知っているのに確認しあわないのは、知らない振りをしている方がお互いにとって都合よく、楽で、いつでも棄てて行けるからだろう。
(そうでもなければお互いやってられまい)

(その重さにこの身を沈めるのも馬鹿馬鹿しい)





寒いと言って寄り添えば、お互いの体温を求めることは当然といえば当然なのだ。この言い訳も何度目だ?などという悪口も飲み込んで、貴方のことを考えることもなく、己の欲を処理できればいいと言い聞かせるように。




私はこの思いの正体を知っている。私のなかにある、この持て余す程の感情の名前を。
けれども自制によって押さえ込まれるその感情を抱えて、今日もまた、娼婦とも慰みものとも家臣ともつかぬ役割りを果たして生きているのだ。



苦しくて狂いそうだ。