息が詰まる。部屋の中にふたりきり。信長様がこっちを向いている。私に気がついても決して表情を変えずにじっと眼を合わせる。私は、その眼に吸い込まれる感覚に陥る。それは永遠とも思える程の濃度で、頭の中は真白。
段々と近付いて来るその眼を食い入る様に観察していると、信長様の瞼によって意識の浮遊は終焉を迎えた。変わりだ、といわんばかりに深いくちづけ。口から全てが飲み込まれそうになりながらもそれに答える。酔い痴れて、身体が空間を彷徨う様な感覚に陥る。本当に息が詰まりそうになるが、離してはくれない。それでもこんなに快感なのは何故だろうか。
不意に離れた唇を、名残惜しくも見逃して荒い息をする。苦しくも狂おしい、快感。腕をまわしてその先を求めていることを伝える。
(浅はかだ。深い思慮も無しにことが進んでいく。本能なんてものか)
(それは本能から来る欲望か。或いは恋。拒めないだけ?)
(そんなこと、今となってはどうでもいいことだ)
あるのはただ、あなたにだかれたいという感情だけ。