途方もなくただ何かを求めて彷徨っていた。無限の可能性などは遠に捨て去ったと信じていたのにまだ、こんなにも熱い。その力は自分をいつか焼き尽くしそうだが、持て余して吐き出す術を知らない。
何日も続く雨はその熱を若干ながらも押さえるために役立った。空は昼間にも拘らず曇り辺りは暗い。熱を冷やす雨も身体には毒だ。まだ死ぬ訳にはいかない私は、今日の宿を探さなくてはならない。晴れていれば野宿でも構わなかったがこれではそうも行かないだろう。ただ、ここからつぎの村までどれ程離れているかなど見当がつかないが。
不意に雨脚の早まる音がする気がした。段々その近付く音に合わせて大地が揺れて雨音でないことを知る。馬のひづめの音だ。そういえばここは今川領だったか?京に向けた行軍…というよりは既に凱旋といった雰囲気を臭わせながら進軍しているという。今川ではない。そもそも方角が違うではないか。では誰が?
馬が光秀を避けて通り過ぎる。その音は雨に紛れて判別は難しい。
光秀は具足の家紋をみてはっとする。けれどもその声は自分の胸の高鳴りとは反比例していた。
「織田の奇襲隊か…」
この時光秀は、無限の可能性とその熱の吐き出し口を見つけた。
あなたは私の世界のすべて