私はどうしようもなくあなたをあいしていたよ


寒空に浮かび道を指し示す星が欲しかった。ただ、それだけを望んでいた筈だったのに。



その炎は未明から燃えて、建物を全焼させた。目がしみる。息をする度に灰や煙が鼻や口に入り噎せそうになる。
けれどもそれすらもどうでもいい事に思えてきた。いや、実際どうでもよかったのだ。

光秀はその建物が炭になる姿を始終みていた。炎の光で、自分の罪を目に焼き付けるように。
けれどもそれは、日の出と共に徐々に虚像のように思えてきて、実際に炎は消えて形を失っていった。残る匂いと煙は天に向かって昇っていく。
光秀は地面に膝を打ち、啼いた。その空虚な声は朝の眩い空に吸い込まれて、消える。しかしそれが己の見た火の残像なのか朝日のせいなのか、自分には理解出来なかったのだが。
一人の男の命と同様、呆気ない消え方だった。