闇のなかにいた。否、いるという感覚ではない…見ている、が正しい。闇をみている。

それはどうしようもなく私自身の中にある闇でひたすらに暗い。そこに走る閃光に続く朱。目眩。この先倒れたら見るものは何か、などとどうしようもないことを思い、身体が地に着く。勢いで頭を打つ。





光秀は目覚めた。そこには確かな感覚があって安堵する。
ふと傍らを見るといつもは事が終わればさっさと帰って行く主の姿がある。
「信長さま…?」
声をかけて返事を待つが寝ているようで返っては来ない。
季節は冬で、肌を突き刺すように寒い。今日はとくにこれといった用事も思いあたらなかったので布団に潜る。たまにはこんな風にのんびりしても罰はあたるまい。目の前に広がる闇と体温の移った温かさと湿気。ふと先程の闇を思い出すために目を瞑る。
あの視界の闇は何なのか。そこに貫く一筋の閃光はなんのための光だったのか。
そんなことを考えていたら、ぬくぬくとした温かさによってまどろみに落とされていった。