ああわたしは何処へいけばいいのか解らなくなった。あのおかたについてゆけばこのよは救われ、しあわせにくらせると信じていたのに。むくわれない。もしかしたらじぶんは、このよの栄光につく祟神か?さいとうもあさくらもしょうぐんけも、仕えたところはすべて滅亡してしまった。(なにか呪われるようなことをしたのだろうか)見限るから滅亡したのか、兆が見えたから離れたのか(どちらがさきだったのか)自惚れ?杞憂か?いまさら解らない。あるのはただ結果だけだ。
(だがそれらも総てどうでもよくなった)








罪悪感などまるで無かった。使命感が強かった。只、自分の心が追いつかないだけだ。人間として生きる者によくある話だ。(燃え尽きて、死んだ)無くして気付く、恩知らず。(死なないと言っていたあのお方も)気付いたら馬を走らせたあの日あの時の心境は誰にも分かるまい。(今はただの屍ではないか)どうしようもない、興奮と焦りの織り成す焦燥感の狭間で、どうにも忘れようのない心痛を思い出す。(それはなんのせい)
冷たい雨のなか、ひた走る。どれ程たったのか。(筒井と細川が、羽柴方に走ったか…)敗走途中。梅雨によって降り続ける雨に体温を奪われる。(分かっていた、私が天下を取れる器でない事くらい)足の感覚が抜け落ちる。転がって泥に塗れる。(それでもあのお方を殺さなければいけなかった)雨が冷たい。鎧が重い。(私の業はあのお方の業より強かったのか)目を瞑る。(ただそれだけのことか)この身が沼のようになった泥に、埋っていく。(それはなんのせい)(なんのせい)(なんのせい)
瞑想して思考回路が迷走する。
(意味なんて、あるのか?)