夏だが、朝は寒い。
冬のそれほどではないにしろ、冷えびえとしていて清々しい。
一方、土はわたのように温かい。小十郎は手入れする野菜たち同様、土にもいとおしさを感じていた。
人間も野菜も衣食住に餓えていては、まっすぐには育たない。小十郎はそう考えていた。
ほんの少し、歯車が狂っただけで壊れてしまう人間。関節を抜いたらそこから先は動かなくなるし、鳩尾を突けば息ができなくなる。或いは心を壊せば、その者の生きる気力を奪うこともある。
野菜と違い人間は、複雑故に脆いのだ。
あの方の派手好きも、寂しさから来てるのかもしれないと、ふと思った。
空には朝焼けがすんで、蒼い空が広がっていた。